反射分光膜厚測定の原理
パラメータフィッティング法
反射分光式の膜厚測定の手法としてパラメータフィッティング法、ピークバレー法やFFT法などがありますがここでは、パラメータフィッティング法をご紹介します。
薄膜の干渉
反射分光測定の対象である透明薄膜において、入射光のすべてが表面で反射するわけではありません。下の図のように一定の割合は表面で反射し、残りは通過して基板に向かいます。膜と基板の界面でも一定の割合が反射して表面側に戻ります。表面の反射光と、膜と基板の界面の反射光は重なり合うため、膜干渉が起こります。さらに、界面の反射の一部が表面で再度反射して基板に向かい、再度反射して………、という複雑な反射現象が生じています。薄膜の干渉にはこのような多重反射が含まれます。
絶対反射率
入射光に対する表面からの反射光の割合を絶対反射率と呼びます。垂直入射を前提とすると、膜のない物体であれば、絶対反射率は表面のフレネル係数だけで決まります。しかし、透明薄膜が存在する場合は、理想的には膜表面のフレネル係数および膜と基板の界面のフレネル係数および膜厚の3つのパラメータで絶対反射率が定まります。表面のフレネル係数は、空気と膜の光学定数(屈折率、消衰係数)で決まります。同様に、膜と基板の界面のフレネル係数は膜と基板の光学定数で決まります。
絶対反射率のシミュレーション
薄膜の干渉の絶対反射率は以下のパラメータで計算できます。
絶対反射率の計算に用いるパラメータ:入射光の波長、膜厚、膜の光学定数、基板の光学定数
下の図のように、例として1層の膜構造を仮定することで、絶対反射率のシミュレーションが可能です。図では波長を変数として3種類の膜厚(100nm、200nm、300nm)について反射率のスペクトルを求めています。3つのスペクトルは同じ光学定数を仮定しています。膜厚によってスペクトルが変化している様子が分かります。
反射分光膜厚測定
上記シミュレーションのパラメータを光学測定の視点で考えると、以下のようになります。
入射波長、膜の光学定数、基板の光学定数:既知のパラメータ
絶対反射率:反射率の基準試料片により光学的に測定可能
膜厚を未知のパラメータとしてシミュレーションを行い、実測値とフィッティングさせることで、膜厚を求めることが可能です。
下の図では、膜厚を0nmから350nmまで1nmずつ変化させた場合のシミュレーションをフィッティングさせています。実測値が膜厚300nmのシミュレーションにフィッティングしています。パラメータフィッティング法は1μm以下の膜厚に対して有効な手法です。
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