業績報告
8期連続で過去最高の業績を更新
2024年9月
当期の業績と事業環境
当期の世界経済は、地政学リスクの高まりや欧米諸国を中心としたインフレの高止まりと金融引き締めの影響による景気減速が懸念されるなど、先行き不透明な状況が続きました。
当社グループの主要販売先である半導体業界では、生成AI向けHBM(広帯域メモリ)関連、世界的なEV(電気自動車)シフトなど、脱炭素化の進展を背景としたパワー半導体関連には堅調な投資が継続されました。最先端EUV(極端紫外線)リソグラフィを用いた半導体製造の能力増強に関わる投資も、下半期より回復の兆しが見られました。
当期の業績については、売上高が2,135億6百万円(前連結会計年度比39.7%増)、営業利益が813億75百万円(同30.6%増)、親会社株主に帰属する当期純利益が590億76百万円(同28.0%増)となりました。受注高は2,727億68百万円(同46.2%増)、期末受注残高は4,621億95百万円(同14.7%増)となりました。
当期の配当
当社は、連結での配当性向35%を目安として、業績に応じた弾力的な配当政策を行うことを利益配分に関する基本方針としております。内部留保は、新技術・新製品の研究開発投資や優秀な人材の獲得などへ有効に活用し、企業体質の一層の強化と長期安定的な経営基盤の確立に役立てていく方針です。
この方針に基づき、当期期末配当金は1株当たり157円、年間配当金は前期比50円増配の230円(連結配当性向35.1%)とさせていただきました。
注目製品
当期、マスク関連の分野では高NA対応のアクティニックEUVパターンマスク欠陥検査装置「ACTIS A300」シリーズをリリースいたしました。EUVリソグラフィを用いた半導体製造は量産に適用されており、当社が2019年にリリースした同装置の「ACTIS A150」シリーズはその優れた検査性能から市場で高い評価を得ております。さらなる微細化プロセスと高NA EUVリソグラフィにも対応するACTISの次世代機「A300」シリーズは、新たに設計された光学系や高輝度EUVプラズマ光源「URASHIMA」を採用し、従来の「A150」シリーズと比較しても非常に高い欠陥検出性能を実現しています。
またウェハ検査の分野では、次世代プロセスで必要とされる高アスペクトレシオ小径ビアのエッチング深さの高精度な測定を可能にしたビア深さ測定装置「VIANCA」シリーズを製品化いたしました。AI技術の発展に伴いより高性能なGPUが必要とされる中、GPUに搭載されるHBMにも高性能化と小型化が求められており、HBM製造時に用いられるTSV(シリコン貫通電極)技術のさらなる小径化と高アスペクト化が大きな課題になっています。「VIANCA」シリーズでは当社独自の光学系により、従来の光学系では測定不可能であった高アスペクトレシオ小径ビアの深さ測定を実現し、Cu配線後のCu高さ測定等、HBM製造工程における重要な品質管理項目を高精度に測定することを可能にしました。
一方、昨今当社の成長に大きく貢献しているのがサービスビジネスです。サービスは過去に納入した当社製品のメンテナンスや消耗品の交換に関わるビジネスですが、お客さまにご使用いただいている装置の台数が年々増えていることで、拡大し続けています。今後ともお客さまに安心して当社製品をお使いいただけるよう、グローバル体制の強化とサービスの品質向上に努めてまいります。
今後の取り組み
前中期経営計画の最終年度だった当期は、新研究開発拠点「Lasertec Innovation Park(通称:InnoPa(イノパ))」の稼働や、積極的な人材採用による「経営基盤の強化」に取り組み、高輝度EUVプラズマ光源「URASHIMA」や高NA対応のアクティニックEUVパターンマスク欠陥検査装置「ACTIS A300」シリーズの開発など、EUV分野を中心に「成長機会の追求」を実行してきました。
このたび、前中期経営計画からさらなる成長を図るべく、2025年6月期から2030年6月期の6カ年を対象とする新中期経営計画を策定いたしました。新中期経営計画では「圧倒的な開発スピード、高い技術力、顧客との強固な信頼関係の構築により売上最大化とさらなる成長を目指す」を方針に掲げ、中長期の成長機会を捉えるべく取り組みを推進してまいります。