環境配慮型製品の開発方針

環境配慮型製品の開発方針
  • 半導体の微細化と製造工程での歩留り向上に貢献する最先端の検査・計測装置を開発し続けることにより、消費電力の削減(解説1)並びに環境負荷の低減(解説2)に貢献することを基本方針とします。
  • 製品の開発、設計、製造、販売にあたっては、省エネルギー化、省資源化に配慮し、廃棄物削減とリサイクルを推進します。
解説1

半導体微細化による消費電力の削減

私たちの生活においては多くの電子機器が使われていますが、半導体デバイス(集積回路)はそれらの電子機器を動かすために無くてはならない存在です。

最先端チップの消費電力削減効果
半導体のスケーリング則によると、集積回路をk分の1に微細化すると、理論的には動作速度がk倍に上昇し、回路面積と消費電力がk2分の1に減少します。つまり、回路を1/2に微細化すると、スピードは2倍、回路面積と消費電力は1/4になります。半導体産業がEUVLをはじめとする最先端技術を駆使して微細化を推し進めているのも、このスケーリング則のメリットを享受するためです。実際にはリーク電流の増加等で必ずしも理論通りにはなりませんが、それでも微細化により、半導体チップのビット単位当たりの消費電力は低減しています。参考までに、大手ファウンドリーの発表によると、最先端チップについては1世代前のチップに比べて最大30%の消費電力低減が見込まれています。
解説2

当社検査・計測装置による環境負荷の低減

最先端半導体分野

マスク(フォトマスク)はガラス基板上に半導体集積回路パターンを形成したもので、リソグラフィーという手法によりウェハ上にパターンを転写させる際の原版ですが、フォトマスク上にわずかでも欠陥や異物が存在していると、全てのウェハに転写されてしまい、製造ロット全体が不良品となり廃棄されます。

当社の主力製品であるマスク欠陥検査装置およびマスクブランクス欠陥検査装置は、フォトマスク上の極めて微細な欠陥や異物を検出する装置です。半導体の性能保証と不良品削減(歩留り改善)に重要な役割を果たしており、デバイスの高性能化と低消費電力化に寄与するとともに、製造工程で廃棄されるウェハやガラス基板、化学物質の使用量低減に大きく貢献しています。

次世代パワー半導体およびその他分野
主力製品以外では、電力効率を格段に向上させ、省エネ特性に優れるSiCやGaNを使った次世代パワーデバイスの実用化や、電気自動車の普及に不可欠な高性能リチウムイオン2次電池などの性能向上にもレーザーテックの検査・計測装置が貢献しています。当社の検査・計測装置は、ブラウン管に比べて消費電力を大幅に減少させた液晶や有機ELなどのFPDの普及にも大きな貢献を果たしています。

当社のグリーン製品

当社では、特に半導体デバイスの消費電力削減とリチウムイオン電池の開発への貢献度が高い以下の製品群を「グリーン製品(Green products)」と位置付けています。
・EUVマスク関連装置
・パワー半導体関連装置
・リチウムイオン電池関連装置

単位:百万円
FY2021 FY2022 FY2023 FY2024
グリーン製品の売上 41,504 54,878 100,937 148,004
製品売上に占める割合 66.9% 70.4% 75.4% 80.2%
グリーン製品の売上・比率

当社のグリーン製品開発への投資

当社は、グリーン製品に関わる分野で、2019年6月期から2023年6月期の5年間で合計約280億円の研究開発投資を行ってきました。当該分野の持続的な成長を見込み、今後は、2024年6月期から2028年6月期の5年間で合計500億円以上の投資を想定しています。

環境に配慮した製品開発の取り組み例

【ACTIS】

最先端半導体製造工程で使用される当社のEUVパターンマスク欠陥検査装置ACTISシリーズは、波長の短いEUV光を用いた検査方式により、従来のDUV光による検査方式に比べ、欠陥検出感度の大幅な向上とEUVマスク特有の転写性位相欠陥の検出を可能にし、半導体の高性能化・低消費電力化、ひいてはナノテクノロジーの普及に大きく貢献しています。また、ACTISシリーズ向けに、デザインを最適化し、環境性能を大幅に向上させたEUVプラズマ光源URASHIMAを自社開発しました。既に本光源を搭載したACTISシリーズはお客さまへの納入が進んでおり、量産適用を開始しています。従来光源と比べてEUV光の発生に使用するSn(スズ)の消費量を1/100に、消費電力を1/3に削減し、環境負荷の大幅な低減を実現しています。

【SICA】
当社のSiCウェハ欠陥検査/レビュー装置SICAシリーズは、SiCウェハ/デバイス生産工程における欠陥検査機として高い市場シェアを誇り、SiCパワー半導体の普及に大きく貢献しています。SiCは次世代パワー半導体の材料として注目が集まる素材であり、これまで使用されてきたSiと比較すると、絶縁破壊電界強度110倍、エネルギーバンドギャップ23倍等の優れた特性を有し、パワー半導体の耐久性向上と電力損失低減を可能にします。SiCパワー半導体は、その特性から産業機器、電気自動車、太陽光・風力発電プラントなどの分野で普及が進んでいます。当社のSICAシリーズはSiCパワー半導体量産時の歩留り向上・コスト低減に貢献し、脱炭素社会実現の一翼を担っています。
【GALOIS】
GaNウェハ欠陥検査/レビュー装置GALOISシリーズは、GaNウェハ/デバイス生産工程における欠陥検査機として、GaNパワー半導体の普及に大きく貢献しています。GaNは、SiC以上の絶縁破壊電界強度と、より安定した結合構造を持つ素材です。高周波スイッチングが可能であり、電源の高周波化による機器の小型化に貢献します。GALOISシリーズは、当社のコア技術である「コンフォーカル+微分干渉光学系」とDeep Learningを含む機械学習アルゴリズムを使用しており、様々な不定形状の欠陥の高感度検出と高精度分類が可能です。
【CIEL】
高感度ウェハエッジ検査装置CIELシリーズは、独自光学系やDeep Learningを用いることで、ウェハエッジを発生源とする多様な欠陥の中から、半導体デバイス製造の歩留まりを低下させる欠陥のみを検出・分類し、半導体デバイスの品質改善、歩留まり向上に貢献しています。
【ECCS B320】
ECCSシリーズは、充放電中のリチウムイオン電池における電気化学反応の進行状況を、リアルタイムにカラー動画で観察できるシステムです。リチウムイオン電池の品質向上や新材料開発に貢献しています。
【OPTELICS】
レーザー顕微鏡OPTELICSシリーズは、各種半導体ウェハを含む様々な材料の多様な検査・計測ニーズに対応できます。R&Dから量産まで各プロセスで最適なソリューションを提供し、各種開発の促進と生産性向上に貢献しています。また、Deep Learningを含む機械学習アルゴリズムを組み込んだAI検査技術により、多様な欠陥検査の画像の取得・分類を可能としており、検査フィールドでの活躍の場が飛躍的に拡大しています。
【製品のリユース・リサイクル】
当社製品で定期交換が必要な主要部品であるレーザー光源とランプモジュールを回収し、再生品として用いています。当社製品が採用する部品が製造中止になった場合は、代替品を採用することにより、製品の運用寿命の長期化に努めています。また、梱包材は極力再利用可能なものを使用しています。